2006年夏期合同研究会
(日本スポーツ法学会2006年夏期合同研究会)

 

2006年度夏期合同研究会が、去る7月22日(土)午後1時30分から岸記念体育会館(財)日本体育協会・理事監事室で開催された(参加者22名)。今回は、事故判例研究専門委員会からの提案で、同委員会の研究会を兼ねる形で、最近出た事故関係者の責任を肯定する趣旨の判決2件を検討することとなった。

1 第1判決

(1)対象判決:1996年8月に開催された「第52回国民体育大会サッカー競技開催決定記念大会第10回高槻ユース・サッカー・サマー・フェスティバル」における土佐高校サッカー部員への落雷重症事故判決(最高裁平成18年3月13日第二小法廷判決)

(2)報告者及び内容:一木孝之会員(國學院大学)

事案及び争点の詳細な説明後、問題の所在を指摘し、学校事故における安全配慮義務論をキーワードとして論点の整理を試みた。特に、学校設置者の責任が問題となった裁判例や大会・講習会等の主催者の責任が問題となった裁判例を多数取り上げつつ検討した。そして、本判決のスポーツ事故一般における意義として、サッカーのみならず、他の屋外スポーツへの影響の大きさを指摘した。

2 第2判決

(1)対象判決:北海道立高校ボート部に所属していた女子生徒(一年、15歳)が、2001年9月下旬に開催された高校のボート大会新人戦に参加し、ボートの転覆によって溺死した事故について、引率教師の過失を認定し、損害賠償の一部を認容した判決(札幌地裁平成17年11月25日判決)

(2)   報告者及び内容:吉川武弁護士(原告側訴訟代理人)

 事故の発生状況が非常に複雑であるため、裁判で提出された図面(3枚)を使用して行われた。判例集では図面が省略されることが多く、配付された図面は事故判例研究者にとっては貴重な資料となった。吉川報告は、事故の概要、調停及び訴訟の経過、第一審の争点及び判決の内容の順で行われた。最後に被害者の父親から、親及び水上業務専門家の立場としての意見が述べられた。

3 質疑

 両報告後の質疑は、活発に行われた。司会者からの質問を省略せざるを得ない程であった。一木報告に対しては、第1判決事案について、望月副会長(控訴審から当該訴訟に関与)から、問題点の確認がなされた。@試合中か否か、A担任が選手を引き上げたら試合放棄になることから、第1次的には主催者が責任を追及されるべきではないか等について質疑がなされた。

 吉川報告に対しては、第二判決事案について、@過失相殺の有無、A個人責任追及の有無・可否、 B他の選手を引き揚げさせた教師が被害者も引き揚げさせなかった理由、 Cボート協会のライフジャケット着用に対する意識(初心者はライフジャケットを着用するのは当たり前という意識を持っている。)、D自然のルールとして、水や雷の怖さを知るべきであり、スポーツ特有の問題ではないこと等について質疑がなされた。

なお、各報告とも日本スポーツ法学会年報第13号(12月発行予定)に掲載される予定である。詳細については同誌をご参照いただきたい。   

(吉田勝光 記)