< 訃報 >

本学会の初代会長であり、本学会創設に多大なご貢献をされた千葉正士先生が平成21年12月17日にご逝去されました。ここに深い哀悼の念とともに謹んで会員の皆様にお知らせします。

2009年12月23日

         日本スポーツ法学会会長
               森川貞夫


追悼 千葉正士先生

                               萩原金美

 本学会の初代会長であられた千葉正士先生(法学博士・東京都立大学名誉教授)は昨2009年12月17日に逝去された,享年90,卒寿にまで達せられたのだから天寿を全うされたというべきかもしれないが、先生の学恩に浴してきた者の一人としては痛恨の極みである。(ここにいささか私事を語ることを許されたい。私は45歳でいわば日曜学者の実務家(弁護士)から大学教授に転身したもので、そんな専業学者としての出遅れの嘆きを先生に語ったことがあるが、先生は「私も45歳の時米国に留学し、法人類学の師ホーベルに出会い、その時から法人類学者として新生したのだ。学問をするのに遅すぎるということはない」と励ましてくださった。今も忘れられない有り難い言葉である。)
 先生は東北大学法文学部に学んだ上、大学院特別研究生として研鎭を積まれ、東京都立大学において専任講師・助教授・教授として定年にいたるまで教育・研究活動に従事され後、東海大学法学部の教授に転じ、同大学で第二の定年を迎えられた。
 先生の学問領域は広大であり、その優れた研究成果は膨大なものがある。法哲学者として出発した先生は法社会学さらには法人類学にその研究を拡大された。日本法哲学会理事、日本法社会学会理事長、国際法人類学会理事等々の要職を歴任されたことは、先生が上記の各分野において傑出した研究者であったことを例証している。先生はこのような余人の追随を許さない研究の延長線上にスポーツ法学というわが国では未開の沃野を見出し、次第に晩年の学問上の関心の重点をこの学問に向けられるようになったのである。大学スポーツの一方の雄である東海大学という職場環境は、先生のスポーツ法学への関心をより高めたであろうことも想像に難くない。
 先生のスポーツ法学に対する強烈な学問的関心は、我が国のスポーツ法学の発展のためにまことに幸いなことだったといわなければならない,先生は同学の士を糾合して本学会を創設し、その初代会長としてスポーツ法学と本学会の基礎固めに尽痺された。いまやスポーツ法学がわが国の法学界において確固たる地歩を占めていることは衆目の承認するところである。
 先生が著された『スポーツ法学序説−法社会学・法人類学からのアプローチ』(信山社、2001年)は、われわれ後進が座右の書として備えるべき古典的名著である。先生の馨咳に接する機会は永遠に失われたが、本書を熟読玩味すればスポーツ法学の進むべき正道を見失うことは決してないと私は確信している。
 先生、どうか安らかにお休みください! 合掌