事故判例研究専門委員会研究会報告
事故判例研究専門委員会研究会の2009年研究会が、10月24日(土)午後3時から岸記念体育館会議室で開催され、13名が参加しました。
高校2年生の陸上部員が、全九州高等学校新人陸上競技対抗選手権大会福岡県南部予選に出場し、棒高跳びで失敗をして頸髄損傷を負った事故について、被災者とその家族が県に対して損害賠償請求をした事件(福岡地判平成21年7月17日公刊集未掲載、控訴中)について討議をしました。
一審原告代理人石田光史弁護士(福岡県)が事件の報告をし、小林史明先生(日本体育大学助教、陸上競技跳躍系の指導者)に棒高跳びについての技術的な点についての助言をいただきました。
事故は、棒高跳びで、踏切位置がバーに近い位置となったため、ポールが立ちきらない状態で、被災者が回転しながら落下したところ、ボックス(棒高跳びのポールが入る部分で緩衝材がない)に頭部から落下したものでした。事故当時の状況が録画されていたため、事故当時の状況を再生し、さらに、事故前の跳躍についての録画とも比較検討し、本件事故の発生要因について、
@ 本件事故前の被災者の負傷が与えた影響、
A ポールの長さを変更したことによる影響、
B バーの高さについて被災者の希望より高く設定された事による影響、
C 公式練習で踏み込み位置がバーに近い位置であったことによる影響、
などについて討議がなされました。
さらに、今後の事故予防の点からの討議がなされ、アメリカにおいては年に2〜3件の同様の事故が報告されていること、日本においてもかつて全国大会において同様の事故例があったことが紹介され、ボックスに落下すると重大事故になるため、かつては、跳躍と同時にボックス部分に緩衝材を敷くシステムも開発されたが、ポールを固定することになり、新たな危険を招くということで普及するに至っていないことも紹介がされました。今後の同種事故の予防について討議しました。
(望月浩一郎記)