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国立代々木競技場内
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一般財団法人日本スポーツ仲裁機構
代表理事(機構長) 道垣内正人
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財団法人全国高等学校体育連盟
会長
三田清一
様
日本スポーツ法学会スポーツ基本法立法研究専門委員会プロジェクトチーム
委員長
菅原哲朗
第二東京弁護士会スポーツ法政策研究会
代表幹事
菅原哲朗
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TEL:03-5992-4431 FAX:03-5992-4432
キーストーン法律事務所
要望書
拝啓。スポーツの健全な振興をはかるために日々活動をされております貴団体の活動に敬意を表します。
さて、日本スポーツ法学会(主管:スポーツ基本法立法研究専門委員会プロジェクトチーム)及び第二東京弁護士会スポーツ法政策研究会は、2009年12月19日、「日本のスポーツを強くするシンポジウム−スポーツ基本法立法を求め、スポーツ権の確立をめざして」とのテーマでシンポジウムを行いました。このシンポジウムには、鈴木寛文部科学副大臣、馳浩衆議院議員、友近聡朗参議院議員、布村幸彦文部科学省スポーツ・青少年局長も参加をされております。
全国高等学校総合体育大会の地区予選会への出場を拒まれた生徒の保護者が、上記シンポジウムにおいて、フロアから、当該生徒が選手として全国高等学校総合体育大会の地区予選会に出場できるよう救済を求める発言をされております。
その後、当該事案につきましては、関係者の自主的な努力で円満に解決できたと聞いておりますが、当該事案を契機に、財団法人全国高等学校体育連盟における決定をめぐる紛争は、日本スポーツ仲裁機構の仲裁による解決が事実上不可能であることが明らかとなりました。
上記シンポジウムを主催した両団体としては、スポーツ権を確立する上で上記現状を改善すべきと考え、貴団体において、検討をされることを要望するものです。
記
1 要望の趣旨
1) 日本スポーツ仲裁機構に対する要望
日本スポーツ仲裁機構においては、財団法人全国高等学校体育連盟が行う決定について日本スポーツ仲裁機構における仲裁による解決が可能となるように、規則を整備すること要望します。
2) 財団法人全国高等学校体育連盟に対する要望
財団法人全国高等学校体育連盟においては、日本スポーツ仲裁機構規則について前項の整備がされた後、同連盟が行う決定(指導を含む)について日本スポーツ仲裁機構の仲裁手続での解決を可能とするように規則を整備することを要望します。
2 要望の理由
1) 日本スポーツ仲裁機構に対する要望の理由
1. 日本スポーツ仲裁機構仲裁規則第2条1項は、
「この規則は、スポーツ競技又はその運営に関して競技団体又はその機関が行った決定(競技中になされる審判の判定は除く。)について、競技者等が申立人として、競技団体を被申立人としてする仲裁申立てに適用される。」
と規定し、さらに第3条第1項では、
「この規則において「競技団体」とは、次の各号に定めるものをいう。
一 財団法人日本オリンピック委員会
二 財団法人日本体育協会
三 財団法人日本障害者スポーツ協会
四 各都道府県体育協会
五 前4号に定める団体の加盟若しくは準加盟又は傘下の団体」
との定義規定をおいております。
財団法人全国高等学校体育連盟は、仲裁規則第3条1項5号の要件を満たしていないため、
「スポーツに関する法及びルールの透明性を高め、健全なスポーツの発展に寄与するため、公正中立で独立の地位を有する仲裁人をもって構成されるスポーツ仲裁パネルの仲裁により、スポーツ競技又はその運営をめぐる紛争を、迅速に解決することを目的」(仲裁規則第1条)
とする日本スポーツ仲裁機構の仲裁制度を利用することができません。
2. 日本スポーツ仲裁機構は、特定仲裁制度も設けており、財団法人全国高等学校体育連盟が特定仲裁に同意をするならば特定仲裁手続の利用が可能であります。
しかしながら、選手登録、大会出場資格をめぐる紛争のように、「請求の経済的価値の算定ができないか、又はそれが極めて困難である場合」は、申立人は、
@ 「申立料金52,500円」に加えて、
A 「請求金額又は請求の経済的価値に応じて日本スポーツ仲裁機構が決定し、仲裁を申立てるにあたって、申立人が日本スポーツ仲裁機構に対して支払う」とされる「管理料金」として、「各々の請求ごとに1,050,000円」
の支払が必要となり(特定仲裁合意に基づくスポーツ仲裁料金規程第3条)、特定仲裁の利用は申立人に過重な経済的負担を負わせることになり、経済的負担が困難な当事者の権利救済の道が閉ざされています。
3. したがって、日本スポーツ仲裁機構に対して、財団法人全国高等学校体育連盟が仲裁に応諾する場合に、当事者に過大な経済的負担をかけることがなく仲裁又は特定仲裁を利用することが可能となるように、要望の趣旨記載のとおり要望致します。
2) 財団法人全国高等学校体育連盟に対する要望の理由
1. 財団法人全国高等学校体育連盟は、同連盟及び同連盟傘下組織の決定に対して、競技者が日本スポーツ仲裁機構に対して仲裁を申し立てることを可能とする規定は存在しません。
2. また、「財団法人全国高等学校体育連盟指導規定」においては、生徒・指導者・学校に対する指導に対しては、財団法人全国高等学校体育連盟内の「指導委員会」への不服申立てのみを規定しております。
スポーツ団体の決定に対する不服申立ては、スポーツ団体の決定と競技者の主張が対立する場面であり、その判断の公平性から、不服申立て機関については、不服申立者から見ても公正性が担保されていることが必要であり、一般的には、スポーツ団体外の紛争解決機関を利用することが望ましいところであります。
日本学生野球協会は、現在、日本学生野球憲章改正作業中ですが、現在公表されている改正案では、日本学生野球協会及びその傘下の団体の決定(指導及び処分を含む)に対しては日本スポーツ仲裁機構に対する不服申立ができる旨の規定を設け、最終的には日本スポーツ仲裁機構の仲裁を解決手続としているところであります。
3. 現時点では、日本スポーツ仲裁機構の規則上は、財団法人全国高等学校体育連盟が仲裁手続を利用する上で、前記のとおり問題があり、直ちに、日本スポーツ仲裁機構の仲裁手続を利用することには困難な面が存在しますが、日本スポーツ仲裁機構においても、本要望書の趣旨に添って改善をしていただけると信じております。
4. したがって、財団法人全国高等学校体育連盟が、日本スポーツ仲裁機構の規則改正により経済的負担が過大にならずに日本スポーツ仲裁機構の仲裁又は特定仲裁に応じることができるようになることを前提として、要望の趣旨記載のとおり要望致します。