2026(令和 8)年 8 月 24 日

〒100-8959

東京都千代田区霞が関3-2-2

スポーツ庁      政策課企画調整室政策調整係 御中

第4期スポーツ基本計画(中間報告)への意見

      日本スポーツ法学会 

   (日本学術会議協力学術研究団体 2007 年指定)

会 ⾧    伊  東    卓 

(事務所所在地)                 

〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-1-23 虎ノ門東宝ビル6F

堀法律事務所内  渡邉健太郎宛

TEL.03-6206-1022

(意見提出事務担当事務所)            

〒530-0047 大阪市北区西天満4 丁目8 番2 号北ビル本館4 階

太陽法律事務所内  岡村英祐宛 

TEL.06-6361-8888

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

令和8年7月付けスポーツ審議会作成の「第4期スポーツ基本計画の策定について・中間報告」(以下、単に「中間報告」という)には、本書添付「別紙1」~「別紙 10」のような問題点があり、各々修正が必要であると考える。

なお、以下本文における引用頁番号は、御庁の公式ホームページで公開されている中間報告(https://www.mext.go.jp/sports/content/20250728-spt_sseisaku02-000051294_01.pdf)に記載された頁番号を指している。

(以下、余白)

別紙1

子どもやアスリートのスポーツ権、セーフスポーツ、セーフガーディング、暴力・虐待防止の体系的かつ明示的な記述の欠落

2025(令和 7)年9月に施行されたスポーツ基本法(以下「令和 7 年改正スポーツ基本法」という)は「スポーツ権の実質化」を目的として改正された経緯がある(2 頁、5頁)にも関わらず、中間報告では、「第1章」「Ⅰ」「スポーツの価値を生かした社会課題解決への貢献」

(6 頁)に「スポーツによるウェルビーイングの向上」が項目として掲げられているだけで、権利性に関しては「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利であり」と言及されるにとどまり、あたかも「スポーツ権の実質化」=「ウェルビーイングの向上」であるかのような捉え方がなされている。

その証左として、中間報告「第2章」「第4期スポーツ基本計画の重点課題」(9頁)において掲げられた三つの重点課題の第一の課題として「国民のスポーツ実施促進と『健康インフラ』構築を通じた、ウェルビーイングの向上や経済成長・豊かな社会の実現への貢献」が挙げられている。また、同重点課題1の内容として、「国民のウェルビーイング向上への貢献」が掲げられたうえで(11 頁、91 頁)、「スポーツが有する本質的な価値を生かし、全ての国民にスポーツの普及を図ることで、国民一人一人のウェルビーイングを向上させ、ひいては、社会全体のウェルビーイングを向上させることを、第4期計画の基本的な目標とする」(11 頁)、「スポーツの実施は、個人のウェルビーイングの向上にとどまらず、心身の健康の保持・増進や生産性の向上などの効果にもつながることが国内外の研究により示されており、第4期計画では、こうしたスポーツの多様な価値を生かして、現在我が国が直面している以下に示す社会課題の解決にも貢献することを目指す」(11 頁)と指摘されていることなどから、スポーツの実施によってウェルビーイングの向上や社会課題の解決への貢献など「スポーツの効用」にのみ焦点が当てられ、スポーツ界において子どもやアスリートへの虐待・体罰・暴言・ハラスメント等、「スポーツ権の実質化」とは相反する事態が今なお継続的に発生していることについては、全く触れられていない。

この点、確かに「国民のウェルビーイング向上への貢献」(11 頁)の本文冒頭には「スポーツは自発的な参画を通じて『楽しさ』や『喜び』を感じることに本質を有する活動である」と書かれている。

しかし、スポーツ本来の「楽しさ」や「喜び」を実現するためには、子どもやアスリートへの虐待・体罰・暴言・ハラスメントを根絶するためにセーフスポーツやセーフガーディングが第一に必要である。したがって、その必要性を明記するとともに、専門機関の整備や競技横断的なガイドラインの整備、指導者や保護者に対する統一した研修制度の整備、コーチングの在り方の見直しを含めたセーフガーディングの制度を体系化することによって、子どもやアスリートのスポーツ権の実質化を実現する必要がある。

そこで、「重点課題1」のタイトルを「国民のスポーツ実施促進と『健康インフラ』構築を通じた、スポーツ権の実質化及びウェルビーイングの向上や経済成長・豊かな社会の実現への貢献」へと加筆・修正し、セーフスポーツ及びセーフガーディングの整備を第一に挙げるべきである。

また、「重点施策1(1)」(29 頁~30 頁)として「スポーツの『楽しさ』を軸とした多様なスポーツの推進」と掲げられ、「背景・現状」として「スポーツの実施を促し継続につなげるためには、単に健康増進のための運動や身体活動だけでなく、スポーツが持つ多面的な『楽しさ』という価値を軸にしていくことが重要である」と記載されている。

しかしながら、当該部分で述べられた状態は、指導者等から子どもやアスリートが虐待・体罰・暴言・セクハラを受けない状態にあることを前提にしなければ成り立たないことである。

そこで、「重点施策1(1)」に「セーフスポーツ、セーフガーディングの体制の整備」という項目を設けることによって、第4期スポーツ基本計画に通底する基本原理として「セーフスポーツ」「セーフガーディング」を明示的に位置付けるべきである。

以上

別紙2

国際的な動向との整合性の確保

近年、IOC による NOC 及び IF を主な対象とした国際セーフガーディング責任者認定制度や国連のビジネスと人権の指導原則により、スポーツにおいても人権に関する取り組みが推進されていることを踏まえ、日本でも国際標準として実践段階に入っているセーフスポーツやセーフガーディングを整備する必要がある。

ところが、中間報告では、「重点課題3」「スポーツの意義や価値を生かした地域・社会への貢献」

(67 頁)において「スポーツを通じた国際交流・協力の推進」

「スポーツを通じた国際的な貢献」と指摘されている程度で、前述のような人権に関する国際的な動向については、何ら具体的に触れられていない。

今後、日本がスポーツ立国として国際的に貢献し、評価を高めていくためには、率先してスポーツにおける国際的な人権保障の取り組みと連動し、セーフスポーツ及びセーフガーディングの体制の整備を推進すべきである。

また、日本政府が 1994 年に批准した子どもの権利条約で保障された人権は、スポーツにおいても保障されるべきところ、同条約の条文の中で、スポーツにおける子どもの人権保障にとって重要な「子どもの最善の利益」(3条)、「意見表明権」(12 条)については、その遵守が求められるべきである。これらの条文の尊重についても、第4期スポーツ基本計画に明示的に盛り込むべきである。

以上

別紙3

中間報告の問題意識の修正

日本では、子どもやアスリートへの虐待・体罰・暴言・ハラスメントの問題を、コンプライアンスに関わる問題として限定的に捉えられている傾向がある。

しかし、そのような限定的な捉え方では、スポーツ活動全般に関わる本質的な問題であるとの正しい理解が進まず、虐待・体罰・暴言・ハラスメントの背景となっている、指導者と指導を受ける者との厳しい上下関係の下で子どもやアスリートが指導者に対して自由に意見を述べることができないという文化的・構造的問題を温存させ、その場しのぎの対応に留まることも懸念される。

そこで、前述したように、中間報告の「重点課題1」にセーフスポーツ・セーフガーディングを明記するとともに、「重点課題2」「ハイパフォーマンスの追求とアスリート等を取り巻く環境整備による、成果・知見の社会への還元」(52 頁)の「施策」欄下の「スポーツ・インテグリティの強化」欄において「誹謗中傷発生時における関係団体の法務等伴走支援体制の強化」と記述されている部分について、「虐待・体罰・暴言・ハラスメント及び誹謗中傷発生時における…」と加筆・修正する必要がある。

また、同「短期的な効果」の「安全・安心な競技環境の構築」の「誹謗中傷等を不安に感じるアスリートの減少」を「虐待・体罰・暴言・ハラスメント及び誹謗中傷等を不安に感じるアスリートの減少」に加筆・修正すべきである。

なお、スポーツ基本法の改正法第 29 条において新たに加えられた義務内容のうち、中間報告では、誹謗中傷の防止義務に関する措置のみが記載され、誹謗中傷防止と同様に同条の根幹をなすものとして国と地方公共団体に課された暴力防止の義務に関する措置について、何ら具体的に触れられていないという点については、基本計画の策定方針として均衡を欠くと言わざるを得ない。

そこで、暴力やハラスメントの発生時における法務等の伴走支援体制の強化についても明記すべきである。

以上

別紙4

「スポーツ権の実質化」の文言の明記

従前のスポーツ基本法が、令和 7 年改正スポーツ基本法へと改正された目的は「スポーツ権の実質化」であった。かかる基本法改正の目的や趣旨を踏まえれば、令和 7 年改正スポーツ基本法の下で策定される第 4 期スポーツ基本計画にも、「スポーツ権の実質化」に関する内容が具体的に盛り込まれるべきである。

ところが、中間報告を通覧してみると、冒頭に改正の目的・趣旨として「スポーツ権の実質化」が 2 か所程度記載されている(2 頁、5 頁)以外には、そもそも「スポーツ権の実質化」という文言すら見当たらない。スポーツ基本法が改正されたことを受けて、その実践のために策定される基本計画としては、通常考え難い内容であると言わざるを得ない。

そこで、「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利である」というスポーツ基本法の条文規定を空文化することなく、国民の権利として実質化するために、スポーツが人権に関わる文化的活動であることを前提としつつ、セーフスポーツやセーフガーディングの制度を具体化するための措置や内容を盛り込むことが必要である。

なお、中間報告の中で「スポーツ権の実質化」を盛り込むべきと考える箇所及び内容は、次のとおりである。「第1章     第4期スポーツ基本計画のねらい」「Ⅱ基本計画策定の考え方」「第4期スポーツ基本計画は、以下の考え方に基づいて策定を行う」(7 頁)の「2」及び「3」の各項目を次のように修正すべきである。

すなわち、「2.幼児期から高齢期まで生涯を見通したスポーツ権の実質化及びウェルビーイングの実現と、社会の成長・発展に貢献する視点を重視」、「3.スポーツ権とウェルビーイングを土台としたハイパフォーマンスの追求と、その成果・知見を社会に還元していく視点を重視」と修正すべきである。また、同「3」で挙げられている最初の項目についても「メダル獲得数だけではなく、アスリートやそれに関わる全ての人のスポーツ権とウェルビーイングに配慮した国際競技力の向上を目指す」と修正すべきである。

以上

別紙5

セーフスポーツ・セーフガーディング・ウェルビーイングの関係性を再構成する必要性

セーフガーディングは、単に危害を防止するということではなく、人権を保障し、ウェルビーイングを促進し、文化を変えるものである。また、セーフスポーツは反応的(reactive)で、セーフガーディングは積極的(proactive)である。そして、子どもの意見表明権を保障し、独立したセーフガーディング制度を確立することにより、日本は、子どもが安全に、自由に、尊厳をもってスポーツを楽しむ環境を作ることができる。

以上のような三者相互の関係性の理解からすれば、中間報告のように、ウェルビーイングを上位概念と位置付ける捉え方では、子どもやアスリートがスポーツを楽しむ環境を整備することは不可能であると考える。スポーツ権の保護に関するセーフガーディングを基底としつつ、セーフスポーツ及びウェルビーイングを実現するという理解・構成に基づいて、第4期スポーツ基本計画全体を再構成する必要があると考えられる。

なお、中間報告の「重点課題2」「ウェルビーイングを土台としたアスリート等を取り巻く環境整備」

(17 頁)の下段左方において、アスリートのウェルビーイングの資料として”Exploring the hidden link : high-performance athletes, health and abuse”が引用されている。しかし、同資料の原文において、結論で Action として挙げられている三つの項目の一つには「国際競技連盟は、ジェンダーや文化への配慮並びにトラウマや暴力の知見を踏まえたセーフガーディング(安全確保)の方針を、さらに強化する」と述べられている点に留意が必要である。要するに、当該資料は、確かにウェルビーイングの重要性に言及しているものの、それがこの資料の最終的な目的ではなく、あくまでセーフガーディングの重要性を証明することを最終的な目的として作成された資料であるから、当該資料の文脈に即して正確に捉え直すべきである。

以上

別紙6

子どもやアスリートの「安全」及び「安心」を基軸とした内容に再構成する必要性

中間報告では、スポーツの「楽しさ」が「ウェルビーイング」と連携したものとして至るところで触れられている(10 頁、29 頁~30 頁、91 頁等)。

しかしながら、スポーツの「楽しさ」は「安全」及び「安心」が保障されてはじめて実現するものであり、子どもやアスリートの精神的・身体的な「安全」及び「安心」を確保することが最優先されるべきである。そのためには、第4期スポーツ基本計画全体に通底する理念として「スポーツ権の実質化」を実現するためのセーフスポーツ及びセーフガーディングの制度を整備する必要がある。

その「安全」とは、対人的な危害からの安全と、事故のリスクからの安全との双方を含み、いずれについても、危害や事故が生じた後に確実に守られるという「安心」が伴わなければならない。前者についてはセーフスポーツ及びセーフガーディングの制度を、後者については予防と補償とを一体とした制度を、それぞれ整えることにより、リスクとその負担を個々の子ども・被災者・指導者に負わせる構造から脱却することができる。

このことにより、子どもやアスリートの「安全」及び「安心」の確保⇒スポーツを「楽しむ」環境の実現⇒あらゆる世代におけるスポーツ参加率の向上⇒「スポーツ権の実質化」の好循環が可能となる。

以上

別紙7「安心」を支える事故補償制度の整備

中間報告の「第 3 章         総合計画編」「重点課題1」「(5)スポーツ実施を促す環境整備の推進」では「②スポーツにおける安全・安心の確保」が掲げられている(107 頁、第 3章-20)。

しかし、そこで論じられているのは、事故を未然に防ぐという「安全」の側面にとどまっており、

「安心」という側面にまで十分踏み込めていない。

そもそも「安心」とは、万一の事態が生じたときに確実に守られるという信頼であり、事故が起きた後の対応が制度として保障されてはじめて成り立つものである。

しかし、現行の補償制度は、この「安心」を支えるに足りていない。

学校の管理下の事故について言えば、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度が過失の有無を問わない給付を行うが、障害見舞金は障害等級第1級で4,000 万円の一時金にとどまり、その後の介護費用に対応する継続的な給付は用意されていない。実際に部活動中の頚髄損傷により四肢麻痺となった事案では、将来の介護費用や逸失利益を含む損害額が1億円を大きく超えることも珍しくなく、生涯にわたる介護と生活の負担は、一時金が費消された後、もっぱら被災者とその家族に残される。不足分の損害回復を求めるには、学校の安全配慮義務違反や顧問教員等の過失を立証して、損害賠償請求訴訟を提起するほかない。その結果、事故に伴う負担は、被災者(被害者)と、責任を追及される指導者という当事者に集中することになる。

また、対象範囲にも空白がある。災害共済給付は「学校の管理下」の災害に限られ、部活動改革により休日の部活動が地域の運営主体へ展開されると、同じ生徒が同じ競技を行っていても対象外となる。その受け皿とされるスポーツ安全保険は、医療費の実費補償ではなく入通院に対する定額給付にとどまる。

以上の課題を踏まえ、事故の予防のみならず、事故後の補償のあり方についても改善が求められることを明記し、補償水準の引上げ及び活動の場を問わない切れ目のない補償の確保を、検討すべき課題として位置付けるべきである。その際、事故に伴う責任と負担を当事者のみに負わせることなく、社会全体で分かち合うという視点が基礎に据えられなければならない。

以上

別紙8

アスリートの多様性とジェンダーアイデンティティへの配慮

中間報告「重点課題 1」「国民のスポーツ実施促進と『健康インフラ』構築を通じた、ウェルビーイングの向上や経済成長・豊かな社会の実現への貢献」(25 頁~)での「重点施策1(3)」「多様な背景に着目したスポーツ施策の推進」(42 頁~)で、「①女性の健康・体力向上のための環境整備とスポーツ実施の促進」を掲げ(42 頁)、「運動・スポーツの効果や価値(楽しさを含む。)についてのリテラシー向上」「女性の健康・体力の保持・増進に向けた環境整備」などが挙げられている(43 頁、100 頁)。また、「重点施策 1(3)」「②障害者のスポーツ機会の充実による共生社会の実現」(44 頁~)として、重点施策としてもパラスポーツの強化などを掲げている(45 頁、101 頁)。さらには、「重点課題2ハイパフォーマンスの追求とアスリート等を取り巻く環境整備による、成果・知見の社会への還元」(51 頁~)では、「重点施策 2(1)」「スポーツ医・科学、情報等による多面的で高度な支援の実現」で「②女性アスリートの競技参画の促進」を掲げ(57 頁)、「女性アスリートが健康に競技継続できるための環境整備」なども挙げている(58 頁、113 頁)。

ところで、オリンピック憲章の根本原則の第 6 項では、人種や性別、「性的指向」などに基づく権利の侵害や差別が禁止されている。また、IOC は、2021 年 11 月に「公平性、包摂性、非差別(性自認と身体の多様性に基づく)」に関する新たな指針を公表した。各競技団体(IF)には、一律の強制的なルールではないものの、各競技の特性や公平性、安全性、包摂性を考慮しながら各国際競技団体が出場資格基準を定めるための 10 の基本原則を提示している。

さらに、日本でも、2023 年 6 月に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が成立・施行された。同法は、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解~(中略)~の増進に関する施策の推進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の役割等を明らかにするとともに、基本計画の策定その他の必要な事項を定めることにより、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性を受け入れる精神を涵(かん)養し、もって性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に寛容な社会の実現に資することを目的」として制定されたもので(1 条)、政府に対して基本計画の策定や、年 1 回の施策実施状況の公表が義務付けている。

しかし、今回の中間報告では、このような国内外での最近の動きが全く反映されておらず、アスリートの多様性の確保とジェンダーアイデンティティ、「性的指向」や性の多様性への配慮への具体的な施策が議論や検討すらされていないと考えられることから、その重点施策には「性自認」「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性」に配慮すべきことを盛り込むべきである。                                               

以上

別紙9

国際大会の継続的な招致・開催についての公正性・透明性の確保

「重点課題3」「スポーツの意義や価値を生かした地域・社会への貢献」の中の「重点施策3(3)」「スポーツを通じた国際交流・協力の推進」「①国際貢献人材の育成と国際大会の継続的な招致・開催」では、重点施策として、「国際競技大会の招致・開催」の項目で「国際競技大会の円滑な開催や新たな招致に向け、大会の開催目的や計画、取組状況等を踏まえ」「引き続き支援」とか、「②官民連携による国際交流・協力を通じた諸外国との信頼関係の構築」が挙げられているにすぎない(85~86 頁、139~140 頁)。

しかしながら、東京オリンピック・パラリンピック大会のテスト大会の計画立案や本番の運営業務をめぐっては、大手広告会社やイベント制作会社が、事前に受注予定者を決める談合を繰り返していたことが独占禁止法違反で摘発されたり、大会組織委員会の関係者などがその地位を利用して特定の企業から賄賂を受け取ったり、便宜を図ったりした一連の不正・汚職・談合・贈収賄事件が発覚した。さらには、招致段階において、国際オリンピック委員会委員への不審な資金提供や、高額な贈答品の送付、官房機密費の活用を匂わせる発言などが後に浮上した。

このような、日本における「復興五輪」の理念の変質、巨額の費用と会計報告の不透明さ、組織運営の肥大化とガバナンスや透明性の欠如などの社会的な反省と課題を踏まえて、第 4 期スポーツ基本計画にも、重点施策として、今後のメガスポーツ大会のあり方や日本における大規模国際大会の開催意義やその受け入れ基準、組織運営の在り方、会計報告などについても、組織運営に当たる一部の者や権限を持つ者への忖度に委ねるのではなく、公正で透明な意思決定や運営のガイドラインの作成、公正な監査・チェック機構の整備(インテグリティの確保)等を盛り込むべきである。

以上

別紙 10

スポーツ紛争解決制度の安定化・強化、人材育成

中間報告には、スポーツ紛争解決制度に関し、「第 3 章 総合計画編」「重点課題2」「(2)スポーツ・インテグリティの強化」「②外的要因に左右されずスポーツに専念できる環境の実現」の中で、「スポーツ仲裁制度のより一層の浸透に向けて、スポーツ仲裁の必要性や、アスリート等がスポーツ仲裁を利用する際の手続き等の制度について、周知・啓発に取り組む。」との記載がある(117 頁、第 3 章-30)が、我が国におけるスポーツ紛争解決制度には、①スポーツ仲裁制度の運営母体の基盤の強化、②スポーツ調停の更なる活用、③スポーツ団体内部の紛争解決制度の更なる活用、④これらに関わる人材の人員及び質の向上・ジェンダーバランスの向上、⑤国際的な性質のあるスポーツ紛争に関与する人材の育成・増加といった課題がある。

これらの課題を踏まえると、令和 7 年改正スポーツ基本法第 29 条の 4 第 1 項に定める「スポーツに関する紛争の仲裁又は調停の中立性及び公正性が確保され、スポーツを行う者の権利利益の保護が図」られるためには、中間報告に記載のある「スポーツ仲裁制度の普及・啓発」に加えて、以下の各事項が盛り込まれることが必要である。

○ スポーツ仲裁・調停制度を運営する公益財団法人日本スポーツ仲裁機構の財政・運営基盤への支援(事務局人員体制の強化、仲裁人・調停人として関わる人材の育成・資質の向上・ダイバーシティの向上、教育・研究機能の強化、手続の IT 化支援を含む)に取り組む。

○ 国内外のスポーツ団体の規則・規定の内容や当該団体内部の紛争解決制度にかかる調査・研究、並びに国内スポーツ団体内部の紛争解決制度の整備や活用に取り組む。

○ 国際競技団体や海外のスポーツ団体が関わる紛争に関与する専門人材の育成や資質の向上に取り組む。

以上

PDF版 第4期スポーツ基本計画(中間報告)への意見