会長挨拶
奈良女子大学研究院生活環境科学系 教授 井上洋一
2016年12月17日、第24回日本スポーツ法学会大会において、望月浩一郎会長の後を受けて、第9代会長に選出されました。微力ではありますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
大学で法学を専攻した後、スポーツ科学の大学院でスポーツと法的問題の勉強を始めたのが1980年、ちょうどスポーツ史上では重要な出来事となったモスクワ・オリンピックボイコットの年でした。まだ当時、体育・スポーツ事故と法的責任の問題をのぞけば、あまりスポーツと法的な話題も取り上げられることは少なく、スポーツ法学という用語も使われない頃でした。それ以来、遅々とした足取りではありますが、アメリカのスポーツにおける男女の平等機会、競技者の権利、アメリカスポーツ政策などを課題に勉強してまいりました。
時の流れは早いものです。そして1992年12月、日本スポーツ法学会の創立から運営に関わらせていただき、その後のスポーツ法学の領域はずいぶん発展してきました。スポーツそのものの発展とともに事故の問題ばかりでなく、人権、教育、契約、環境、紛争解決、ドーピングそしてガバナンスやインテグリティの問題まで広く社会との接点を深めてきました。これからもさらに新たな課題が生まれてくるでしょう。
また、一方でテニスをはじめ、いくつかのスポーツの指導そして実践も続けてまいりました。そのような視点も大切にしつつ、今後の活動を進めてゆきたいと思います。
さて、我が国は、2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピックそして2021年には関西ワールドマスターゲームスといった大変大きな国際スポーツ大会を迎える時期です。とくに、そのような競技イベントは大きく取り上げられ、様々な課題も出てくるでしょう。どうしても、それらに目を奪われがちとなりますが、本学会は、それらの課題はもちろんですが、生涯スポーツの領域にもしっかり足場を置き、みんなのスポーツからプロスポーツまで、自由で、公正そして安全なスポーツ活動、スポーツの世界を作り上げてゆく仕事をしていきたいと思います。
本学会は、すでにスポーツ基本法制定の過程や暴力・人権侵害問題そしてスポーツにかかわる個別法の制定の可能性等について、意義のある活動を進めており、会員も現在390名を超えるほどとなりました。今後、さらに日本スポーツ法学会が果たす役割はますます広がり、大きくなっています。
新しい体制でも理事、監事、事務局員の多くの有能な方々に携わっていただくことになりました。
これまで同様に本学会を会員の皆様の力で支えていただきますように、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
2017年正月