日本スポーツ法学会第25回学会大会報告

2017 年12 月16 日(土)、第25 回大会が同志社大学新町キャンパスにおいて開催された。

今大会は、権利意識が高まりつつあるスポーツ界の昨今の状況を踏まえて、「アスリートの権利は如何に保護されるべきか~選手会・選手委員会の未来像」というテーマが設定され、午前は2 会場で12 題の自由研究発表が行われ、午後は総会に続いてシンポジウムが開催された。

基調講演では、辻口信良会員(太陽法律事務所)が、「アスリートの権利は如何に保護されるべきか」をテーマとして、基調講演を行った。基本的人権としてのスポーツ権、アスリートの権利保護、アスリートの個別的権利等を具体的内容とした講演が行われ、最後に「スポーツが平和を創る」というスポーツの平和創造機能が強調された。

つぎに、川井圭司会員(同志社大学)、松本泰介会員(Field-R 法律事務所・早稲田大学)、岡村英祐会員(太陽法律事務所)、渡辺伸行弁護士(TMI総合法律事務所)、高橋美穂氏(バルセロナ五輪代表・日本テコンドー協会理事)の5 名の方から個別報告が行われた。

川井会員からは、「世界的動向の観点から」をテーマに報告が行われた。アスリートの契約に関する取引制限の一方的導入から合意(団体交渉)に基づく導入、スポーツの自治への司法・行政の介入、交渉・協議を可能にするプラットフォームを軸に、アメリカ、イギリス等の各国の動向や具体的事例が紹介された。

松本会員及び岡村会員からは、「日本のスポーツ団体における選手組織の現状について~ATHLETEINVOLVEMENT調査(2017)から」をテーマに、主として国内トップ団体全101 団体を対象として、ウェブ公開情報調査及び電話インタビュー実施の方法により、選手組織の有無、選手委員会の構成や選出方法等の事項に関する調査の結果が紹介された。各国のNFにおける状況も紹介され、スポーツ団体及び選手組織の意思決定における法的正統性を確保すること等が今後の課題であるとの報告があった。

渡辺弁護士からは、「競技団体の立場から」をテーマに、日本ラグビーフットボール協会における業務経験も踏まえながら報告が行われた。アスリート委員会・選手会発足の経緯、日本ラグビーにおける選手契約の構造が紹介され、アスリート委員会・選手会の未来像について、意思決定への関与のあり方やテーマ選択等に関する提言がなされた。

高橋氏からは、「一般社団法人全日本テコンドー協会 アスリート委員会の活動事例」をテーマに、アスリート委員会発足の経緯、アスリート委員の選任方法、活動内容等が紹介された。設立当初は、協会側だけでなく、アスリート側からもネガティブな意見があったものの、双方の立場にとって有益な組織であることを説得しながら、アスリートボイスの収集等の活動を行っており、環境改善等の成果が得られたとの報告がされた。

各自の報告後、川井会員を中心に様々な視点から討論がされ、会場からも様々な質問や意見が出される等、活発な議論が行われ、今大会も盛会に終わった。